Projects
プロジェクト・研究内容の紹介です。
光カメラ通信 (OCC)
近年、スマートフォンやドローン、自動車など、私たちの身の回りには高性能カメラが搭載された機器が急速に増えています。カメラは「見る」だけでなく、「光を読む」ことで情報を受け取るセンサとしても働ける――それが 光カメラ通信(OCC)です。
LEDやディスプレイから発せられる光の中にデータを重畳させ、その光のパターンをカメラが動画像として撮影・解析することで、電波を使わずにデータを送受信します。光無線通信と画像処理を融合したハイブリッド技術であり、電波を使わない・安価・送信者の位置を特定可能、といったメリットがあります。
本研究室では 512色を同時に扱う Color-Shift Keying により、世界トップクラスの高速伝送を達成しました。現在は色を扱う学術的な基礎検討に加えて、ドローンなどモビリティのカメラを“目”として活用する方法を探究しています。
OCCは光・通信・AIが交差する学際領域に位置づけられ、様々な用途での活用が期待されています。本研究室では、産学連携を通じてこの技術を実社会へ広げるオープンイノベーション体制も推進中です。

符号化・変復調
映像中への光信号の埋め込み方や、カメラで撮影した動画像の色の扱い方に関する技術を研究しています。大学発SUである株式会社Flybyでは、画像エンコードAIとスマートフォンアプリによる実用化に取り組んでいます。

モビリティ測位・制御
OCCではカメラのピクセル情報を用いて、送信データと同時に送信光源との位置関係を特定できます。ドローン等のモビリティの自己位置推定や、モビリティ間でのメッセージ交換などにも活用できます。

Event-based OCC
画素ごとの輝度変化を高速に検出するイベントカメラを用いた光通信の研究を進めています。従来のカメラと比べて長距離・高速の通信が可能で、今後の研究開発・活用が期待されます。
行動センシング・支援
私たちは 「人の行動を“計測して、理解し、より良い行動に導く” ことをテーマに、AI・センシング技術を組み合わせた行動センシング&支援プラットフォームを研究しています。カメラや IMU、LiDAR、プロジェクタなど汎用デバイスを活用し、①行動をセンシング・可視化し②フィードバックにより行動変容を支援する仕組みを検討しています。
具体的にはオフィスワーカのアクティビティ可視化、クラウドカメラを用いた飲食店のお客様の滞在状況のモニタリング技術、自動車ドライバの異常姿勢のアラート技術などに関する実績があります。また、研究成果をベースにした空間ARによるトレーニングコンテンツは、ダスキンミュージアムにて「モップがけの達人」として商用化されています。
ただし本テーマでは、実地でのセンシングの目的に応じた具体的な問題の抽出・定義と、実フィールドでのデータ収集などが重要となります。そのため本研究室では特に、企業と共同で実活用向けの研究開発を実施しています。さらに、より実用的なシステムや商用開発については、大学発SUである株式会社Flybyにて担当しています。

アクティビティ可視化
動画像からオフィスワーカの姿勢などを抽出し、コミュニケーションなどのアクティビティを測定・可視化するAIのプロトタイプを開発しました。

行動センシングAI
クラウドカメラを用いた飲食店の環境モニタリングや、自動車ドライバの観測技術などを研究。さらに、大学発SUである株式会社Flybyでは商用AIシステムの開発まで実施しています。

空間AR
9軸IMUセンサと2D-LiDARでユーザの動きを認識し、短焦点プロジェクタで床にアニメーションを投影。ゲーム感覚で正しい動作をトレーニングする空間AR支援システムを開発しました。
水中IoT
港やダムなどの水中インフラは年々古くなり、点検や修理の必要性が高まっています。ところが、それを担う潜水士の高齢化と人手不足も進んでいます。海の資源管理や環境保全、さらには安全保障の面からも、水中をいつでも見守り、遠隔で作業をサポートできる仕組みが求められています。ただ電波の届かない水中環境では、Wi-Fiなども届かずデータ通信やGPS測位もできず、従来メジャーだった音響やレーザによる通信は高価であるという課題がありました。
本研究室では、水中光カメラ通信(水中OCC)による水中通信および、それをベースとした水中IoTシステムに関して研究しています。水中という過酷なフィールドを対象に、神戸市「海プロジェクト」などを通じて実証を進めてきました。近距離・低レートですが安価な水中OCCを実用化できれば、港湾施設の遠隔点検や海洋環境の常時観測など、多彩な革新的サービスが実現できると期待されます。
さらに、大学発SUである株式会社UMINeCoでは、水中OCCによる水中測位サービスの実用化に向けた開発を進めています。海中でも高精度かつ比較的低コストで測位ができれば、様々な作業のDX・自動化などに貢献できると考えられます。水中OCCは、AI・IoT時代の新たな通信インフラとして大きなブレークスルーとなり得る技術だと言えます。

水中観測
水中に設置したセンサのデータを光信号として送出し、ROVやAUVなどの水中モビリティのカメラで撮影して受信する水中モニタリングシステムを検討しています。

水中画像処理
水中では、光の波長に応じて異なる吸収・散乱が発生します。また実海域は、日光や濁り等の環境変動も大きい困難な環境です。その中でもデータを読み取る画像処理を検討しています。

水中測位
安価・高精度の水中自己位置推定が可能です。水槽環境では距離9メートル以下で数cmオーダの測距を達成しています。本シーズに基づく製品開発は、株式会社UMINeCoにて実施しています。
デジタルツイン
デジタルツインは、現実空間で起こっていることを そっくりそのまま仮想空間に映し出す“分身” です。たとえば農場の温度や作物の成長、橋やトンネルの状態などをリアルタイムで取り込み、パソコンやクラウド上に 3D モデルとして再現します。そのおかげで、現場に行かなくても状況をチェックしたり、シミュレーションで「もし○○したら?」を試したりできるようになります。
でも、本当にリアルタイムで映すのは大変です。従来のIoTセンサでは、たくさんのセンサのデータを集めるための通信モジュール・回線・設定のコストや、位置合わせなどの問題がありました。そこで私たちが注目しているのが 光カメラ通信(OCC) です。LED が発する光を“点滅信号”として使い、近くのカメラでデータを受け取る仕組み。カメラはすでにスマホやドローンに搭載されていますから、新しいアンテナや特別なチップを付け足さなくても OK。電波ではなく光を使うので、干渉を気にせずに大量のセンサを動かせます。
デジタルツインの活用は、まだ萌芽的な段階ですが、今後は様々なフィールドで広がっていく見込みです。私たちは農園での実証実験などを通して、社会実装に向けた活動に取り組んでいます。

統合センシング
ドローンなどモビリティのカメラを用いて、イメージング(撮影)・自己位置推定・センサデータ受信を統合的に実施可能に。モジュールの削減・低コスト化に寄与します。

環境データ
LEDモジュールを用いた安価なセンサを多数設置して、環境データを高密度に収集。デジタルツインに環境データレイヤを追加し、遠隔モニタリングやシミュレーションに寄与します。

デジタルツイン農園
北海道のハスカップ農園などで、デジタルツイン農園の実証実験を進めています。将来的には、生育シミュレーションのほかデジタル市民農園などへの活用も検討しています。